大人への一歩を踏み出す新鋭アーティスト LANAの“リアル” | Interviews

20歳を目前に控える“ティーンの味方”的アーティストの今の心境を、少し大人な表情のファッションシュートとともにお届け

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ティーンエイジャーの“リアル”を詰め込んだリリック、アタック感のあるビートに乗るハスキーな声、こぶしを効かせた特徴的な歌唱で、Z世代から圧倒的な支持を集める新鋭アーティスト LANA。そんな彼女の2nd EP『19.5』が3月6日(水)にリリースされた。最新作では、子どもと大人の狭間で揺れる曖昧な心情を描いたリード曲 “Almost 20”をはじめ、若手フィメールラッパーの7を招聘した“WE WANT!!!”、初のラブソングとなる“24/7 YOU…”、ミディアムバラードの“For bbys”など、ジャンルの壁を超えた全6曲を収録。今年20歳を迎える、彼女のラストティーンの心境を等身大に綴った作品となっている。


LANAが活動をスタートさせたのは、わずか15歳だった2020年。実兄であるLEXの勧めから、音楽共有プラットフォーム『SoundCloud(サウンドクラウド)』に音源をアップロードしたことをきっかけに、彼女の才能は瞬く間に拡散された。2022年に“FRAME(feat. LEX, Saru jr.fool, taisyov)”で本格デビューを果たし、翌2023年には国内最大規模のヒップホップフェス「POP YOURS 2023」に出演。Awich(エーウィッチ)、ゆるふわギャングのNENE(ネネ)、MaRI(マリ)とともに、サイファー楽曲 “Bad Bitch 美学”を披露した。また、同年7月にリリースした1st EP『19』収録曲 “BASH BASH(feat. JP THE WAVY & Awich)”は、現在『Apple(アップル)』のCM曲にも用いられるなど、その勢いは止まることを知らない。本稿では、そんな彼女の最新EP『19.5』の制作秘話から、20歳を目前に控えた今の心境、そしてこれからについて、少し大人な表情を魅せてくれたファッションシュートとともにお届けする。

Hypebeast : まず、音楽活動をスタートさせたきっかけを教えてください。

LANA : 14歳、15歳くらいの頃、失恋をして落ち込んでいた私に、兄であるLEXが「歌ってみなよ」と言ってくれたのがきっかけです。そこから、私がアコースティックギター1本のトラックをYouTubeで見つけてきて、メロディとリリックをつけて、兄に録ってもらったのが始まりですね。当時は、ヒップホップっていうよりもカントリーミュージックみたいな、しっとりとした曲が自分のなかでしっくりきたんです。アコギのトラックを見つけた時に自然な流れで「これでやろう」って。

幼い頃から音楽に触れてきたとのことですが、当時はどんな音楽を中心に聴いていましたか?

幼いときは、沖縄の民謡だったり、美空ひばりさんだったり、母から教えてもらう音楽はもちろん、ミュージカル『アニー』の“トゥモロー”とか、結構幅広いジャンルを聴いていましたね。姉のLILIがダンススタジオに通っていたのもあって、ダンサーさんが使うようなゴリゴリのヒップホップ、バレエに使うような楽曲、ジャズまで、色んな音楽が無意識に入ってくる環境ではあったかなと思います。

もともとアーティストになりたいという願望はあったのでしょうか?

最初は、遊び感覚で曲を作ってSoundCloudにポンポンと載せていただけだったんです。今考えれば、兄がラッパーということもあって、イチから全てを始める人に比べたら、いろいろな人に聴いてもらえる状況ではあったのかなと思うんですが、一発目に出した曲がちょっとだけ広まったことで音楽制作が面白くなって。そこからは、半年に1回くらい曲を作ってSoundCloudに載せていましたね。今は音楽にどんどんのめり込んでいっているんですが、当時はアーティストになろうとは全く思っていなかったです。

最初から、メロディラインに関してもあまり悩むことなく自然につけることができたのでしょうか?

そうですね。メロディラインに関しては、そんなに悩むことはなかったです。夜、イヤホンをつけて「ナナナナ~」ってトラックに音を乗せたりとかして。兄のRECしてる姿を見ていたから、特に悩んだりはせず、なんとなく自然とできたんだと思います。感覚人間なので「大体こんな感じかな」ってトラックに最後までメロディを乗せてみて、自分で聴いてみて「いいじゃん、これでいこう」みたいな。だから、デビューしたての頃は特に全然知識がなくて、アーティスト同士で話したりしたときに、何を言っているかわからないこともありました。「何その用語?」みたいな。今、まさに音楽を学んでいるところなんです。

専門的な知識がなかったことで、より伸び伸びとした音楽が生み出せたのかもしれないですね。楽曲を聴いていると、かなり英語がお上手だと思うのですが、どのように習得されたのでしょうか?

リリックにするときは、翻訳を使うことももちろんありますが、幼いときに母がアメリカ人と付き合っていたこともあって、あまり英語に抵抗がないんです。その環境のおかげか、具体的に話していることがわからなくても、ある程度こういうニュアンスかなって理解できる。あとは、ドラえもんとかちびまる子ちゃんとか、日本のアニメを一切見たことなかったくらい、ずっとディズニー・チャンネルを見ていたので、耳が英語に慣れていたのかもしれないです。それに、洋楽もよく聴いていましたね。ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)とかは、彼がデビューした10代の頃(の楽曲)から聴いていました。

MV、アートワークを通して、個人的にLANAさんにはビビッドなピンクのイメージがあったのですが、そういったもののアイデアもご自身で出していらっしゃるんでしょうか?

そうですね。私がまず「これがしたい」とアイデアを伝えて、周りの人たちが汲み取って、形にしてくれています。「これは嫌」とか「こういうことはしたくない」とか、無意識に自分のなかにありますね。アイデア源は、SNS。TikTok、Instagramはもちろん、Pintarestに関してはほぼ毎日見ています。LANAとしては、やっぱりまだ“現役ギャル”なイメージが強いと思うんですが、最近のプライベートではブラックを着ていることが多いんです。もう少しで20歳になるし、ちょっと落ち着こうかなみたいな(笑)。でも、ランドセルもピンクだったくらい、幼い頃からずっとピンクが大好き。それこそオールブラックのファッションのときは、シューレース、バッグ、ゴムとかをピンクにして、ワンポイントで取り入れたりもします。

3月6日(水)にリリースされたEP『19.5』について伺いたいのですが、今回特に思い入れのある楽曲はありますか?

“Almost 20”と“For bbys”かな。“Almost 20”は、1年半前くらいに1人で家で作った曲をベースにアレンジしました。この曲は、私の10代の恋愛が1つ終わったという心情を描いているんです。19歳と20歳の境目にいる子どもと子どもが、お互いめっちゃ好きになのに、環境の変化でぶつかりあって、ぐっちゃぐちゃの感情になって、みたいな。私は音楽を作ることに対してもすごく本気になってきていて、仕事も頑張りたいと素直に思っているけど、すごく好きな相手にそれを理解してもらえない、という制作当時の状況を切り取りました。今はもう、この曲を作ってから時間が経っているし、どんどん新しい曲を生み出しているのもあって気持ちが変わってきてはいるけど、当時はリアルにそういうことを思っていたんだと思います。

結構、赤裸々なリリックでしたよね。

そうなんです。これまでは自分の恋愛事情に一切触れたことがなかったんですが、EPを作るタイミングにもハマったので「思い切って出しちゃおう」って。初めてのラブソングとなる“24/7 YOU…”も、みんなに恋愛事情を明かすみたいでちょっと恥ずかしいけど、リリックを書いていて楽しかったです。

今回、音楽制作をするにあたってコンセプトとしたものはありましたか?

これまでは、まずは自分を知ってもらいたいと思っていたから、みんなが乗れるようなアッパーな曲ばっかりだったし、自分のネガティブなところには触れていなかったんですが、今回のEPは、もうちょっと自分の闇の部分を出してみたかったんです。この1年、もちろん苦しいこともあったけど、それに一喜一憂したり、浸ったりする時間もなかったから、SNSに思いを書き込むこともなくて。だから、今回のEPでは、自分のヘラってる(精神的に落ち込んでいる)部分も見せたいと思ったんです。

上京して、これまで住んでいた田舎と都会のギャップに苦しんでいる女の子だったりとか、TOXICな恋愛をして苦しんでいる女の子だったりとか、ただただ楽しいめっちゃヘルシーな女の子だったりとか。いろんな“リアル”を物語みたいな感じで詰め込みました。もちろん、今までのリリックにも嘘はないし、自分が経験したことも言っているんですが、今回はもっとリアルな自分の物語に焦点を当てています。多分、自分の地元の友だちが聴いたら、誰かしらが「俺かな?」「私かな?」とか思っちゃうかもしれないくらい、リアルな思いを詰め込んでいますね。

“仏”みたいに、なんでも言えるような人でありたいし、誰のどんな思いも否定しない存在でありたい
『19.5』の制作期間はどれくらいかかりましたか?

今回は、1カ月間で作りました。長期戦が苦手なので、多分一生このスタイルだと思います。ゴールがあまり明確ではないものとかは、絶対に一生作れない、書けないと思います。だから、自分のなかで「これをやる」ってパチってハマった瞬間に、バーって一気に制作する。結構自分に正直なんです。

先に曲のコンセプトを決めてから、リリックを書き始めているのでしょうか?

まず、“ラストティーン”というテーマを軸に、楽曲ごとに自分のリアルを出していったという感じです。先ほど説明した“Almost 20”をはじめ、“For bbys”、“99”は、私が17~18歳の頃に趣味感覚で作っていた曲です。リリックに関しては、無駄に綺麗にしても意味がないし、当時の言葉をほぼ変えずにアレンジしましたね。

LANAさんと言えば、“ティーンの味方”というイメージですが、20歳を迎えるにあたって、今後そのスタンスがどのように変化していくか、現時点で感じていることはありますか?

1年前まで、大人は意見を押し付けてくるイメージがあったので、すごく嫌悪感を抱いていて、なるべく関わりたくないと思っていたんですが、いざ20歳を目前にしてみると、大人も案外いいかもと思うこともあるんです。その反面、こういう大人にはならないようにしようって思うこともある。私はこれまで、10代の代表としてティーンの子たちから共感してもらえることが多かったと思うけど、20歳になったら、説教みたいにならない程度に思いを伝えていきたいかな。最近、“仏”という言葉が気に入っているんですが、“仏”みたいに、なんでも言えるような人でありたいし、誰のどんな思いも否定しない存在でありたい。そういう立ち位置でいたいなと思っています。だから、20歳になった瞬間、Instagramのストーリーズとかで質問箱をやってみたりね(笑)。ティーンの子たちの思いをもっと聞いてみたいなと思っています。

意見を押し付けてくるような大人たちが、どのように変わっていったら、LANAさんの世代の子たちがより自由に活躍できたり、元気に働けたり、自分を表現したりできると思いますか?

(大人は)生きている年数が違うから、自分が先に経験して危険だと思ったこととか、経験する必要がなかったと実感したことを、若い子たちがやらないように阻止しようとする。今となってはある程度、そういう対応をしてきた大人たちの気持ちもわかるけど、当時の私にとってはそれがウザかった。私自身は、それを見たことがないし、経験したことがないし、感じたこともないのに、「何を勝手に決めつけてるんだろう」って。実際にどうなるかなんて、その人によって変わってくるんだから、私は20歳になっても、それをティーンの子たちに強要しない。みんな全部経験した方がいい、と思うんです。

“99”の楽曲にも、“大人にいつかなって子どもの気持ちなんてわからなくなるのかな”というリリックがありましたが、LANAさんは今まさにそんな葛藤のなかにいるのかなと思いました。

“子どもの気持ちなんて忘れちゃうのかな”みたいな感情は、まさに“99”を作ったときに思っていたことで。でも今は、20歳が目の前に迫りすぎて、20歳になる自分を私自身が完全に認めちゃっているというか、もう乗り越えるしかないと思っているんですよ。意外と、私が10代の時に描いていた20歳のイメージと、今実際に私が見ている20歳の人の印象が全然違うんです。ちょっと前までは、大人をひどく嫌っていたけど、今は意外とわかっている人もいるかもと思っているから、20歳になりたくないと全然思っていなくて。そういう瞬間に、自分も大人になっていっているんだなと感じます。でも、聴いてくれるティーンの子たちには、意見を押し付けるんじゃなくて、「自分が(大人に)なったらわかるよ」くらいのトーンで伝えていけたらなと思っていますね。

ご自身の20代の10年間はどのようなものにしたいですか?目標や理想像などがあれば教えてください。

プライベートで言うと、車も欲しいし、時計も欲しいけど、まずは音楽をガチで頑張って、家族のために地元に家を建てたい。私は親が母しかいないんですが、ずっと絶対的な味方でいてくれる母にももっとやりたいことをやって欲しい。だから、ひとまず家を建てるのが目標ですね。

アーティストとしての最終的な目標としては、アメリカで戦えるアジア人アーティストになること。でも、そこまでいく道のりも大切にしたいと思っています。今はとにかく日本で頑張って、それから、アジア、アメリカとしっかり段階を踏んでいきたい。この10年間はとにかく頑張ろうという感じです。

でも、実際には今は今、としか思っていなくて。自分がなりたいところに対して、どうやって頑張るかは、そのときの自分に任せたい。私の音楽を聴いてくれている10代の女の子たちと一緒に年を取っていって、25歳くらいからはもうちょっと大人なことも言っていきたい……とかも思っています(笑)。

“Almost 20 Live”の追加公演の開催時には20歳を迎えていることとなりますね。20歳になったLANAさんはファンの方々にどんなパフォーマンスを魅せたいですか?

“Almost 20 Live”の3公演については、かなり構想を練ったんですが、20歳になってからの追加公演に関してはまだ考えていなくて。でも、今までは健気に頑張っている姿が人の心に刺さっていたのだと思うんですが、20歳になった瞬間からは、「うわーLANAちゃん、いきなりスッとしすぎじゃね」って思われるくらい、凛としたパフォーマンスをみんなに魅せたいですね。

今後、新鋭アーティストとして、さらに注目されていくと思いますが、そのなかで信念として揺るがずに大切にしていきたいものはありますか?

今、私自身、もっと多くの人にLANAという存在を知ってもらいたいとか、もっと音楽について深く知っていきたいとか、いろんな欲がビュンビュンに出ているんです。そんななかでも、私が作ったものに対して、返ってくる反応が徐々に増えてきていて、少しずつファンがついてきてくれているのを感じています。もちろん、嬉しいリアクションもたくさん受け取っている一方で、有名税じゃないですが、LANAの名前を使って何か悪さをしようとする人とかも出てきていて。でも、そういうのにいちいち食らっていたらいけないなと思っていますね。落ち込んでいたら何もできないから、20歳という節目を迎えるにあたって、自分の心を守ってあげることをより大切にしていこうと思っています。

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