ゴルフ界を映すレンズ Kohjiro Kinno の世界 | Shotmakers
マスターズで優勝した際のタイガー・ウッズを捉えたKohjiro Kinnoにゴルフ写真家としてのこれまでの道のりなどを伺った
かの有名な、2019年マスターズでタイガー・ウッズ(Tiger Woods)が優勝した瞬間の写真。両腕を突き上げ、パターを高く掲げ、歓喜に満ちた表情。あの瞬間をとらえたのは、フォトグラファー Kohjiro Kinnoだった。偉大な写真家は、最高のタイミングで最高の場所にいる方法を知っているようだ。
11年前、彼は『Sports Illustrated』での初仕事を、2019年にタイガー・ウッズが優勝する前最後のメジャー勝利のゲームである、2008年の全米オープンで行った。他にも、マイク・タイソン(Mike Tyson)やステフィン・カリー(Stephen Curry)、マニー・パッキャオ(Manny Pacquiao)、シモーン・バイルズ(Simone Biles)らといった偉大なアスリートを撮影してきたKinno氏。彼自身は“アーティスト”と呼ばれることを好まないが、その作品群はアートのホットスポットと言われる米ニューヨーク・ソーホーのギャラリーに展示されても全く違和感がない。
Kinno氏は名前からも想像できる通り日本にバックグラウンドを持つが、実は生まれも育ちも南カリフォルニア。現在も同じ地域に住んでおり、現在はサンクレメンテを拠点とするモダンなゴルフ情報誌『The Golfer’s Journal(以下TGJ)』と契約を結んでいる。彼の写真は頻繁に『TGJ』に掲載されており、同社のゴルフコミュニティ Broken Tee Societyとともに活動を行う。
本稿では、そんなKinno氏がここまでのキャリアにたどり着いた道のりから、7月12日(金)より『Hypegolf』代官山旗艦店にて展示される作品について、写真家を目指す人へのアドバイスまでを伺うべく、インタビューを実施した。
Hypegolf:なぜゴルフを選んだのですか?
私自身はもう全くゴルフをしないのですが、ゴルフの写真という意味では、自然とここにたどり着いたという感じです。父が大のゴルフ好きで、時間が許す限り練習してラウンドに行っていました。インターネットがなかった時代だったので、“ゴルフ上達”を掲げた本が家中にありましたね。なので、父に練習場やコースに連れて行ってもらうのは自然な流れでした。あと、高校ではゴルフ部で少しだけプレーしていました。
今回Hypegolf Japanストアで販売される写真について教えてください。
今回展示および販売される写真は、2019年から2023年に撮影したものです。スポーツに限らず、どんなものでも近くでよく見てオープンな気持ちを持てば、その美しさが見えてくるものです。
東京のような大きな都市で写真を飾って販売することは、Kinnoさんにとってプラスになることだと思いますか?
オフラインで作品を展示する機会は、どんなケースでもプラスだと思います。オンラインとなると作品の見せ方のコントロールに限りがありますが、実物の作品であればある程度見せ方をコントロールできるので。
ゴルフシーンを撮影する上で、最も難しいことは何ですか?
光が良くない、雨がレンズに入ってくる、気温が100度な上に大雨、蚊、蛇、ダニ、家を離れなければいけない時間……多くの要素があります。しかし、ゴルフを撮影する上で本当に難しいのは、天候や蛇ではなく、何かユニークなもの、その場所や人々のストーリー、自分という人間が伝わる瞬間を捉えることです。手入れの行き届いたコースでドローンを使って“きれい”な写真を撮るのは簡単で、難しいのは“意味のある一瞬”を写すことです。
お気に入りのゴルフコースはありますか?
モントレー半島周辺のコースですかね。美しい光、美しい空気。あとは、ペブルビーチ。プレーはしなかったのですが、家族全員で最後に訪れたコースです。数年後に父は他界しました。
Golfer’s Journalとの仕事を始めたきっかけは何ですか? KinnoさんにとってGolfer’s Journalの魅力は?
発行人のブレンドン・トーマスが連絡してくれたことがきっかけです。私は即答で“Yes”と言いました。逆にブレンドンが少し考え直していたかも(笑)。私にとってGolfer’s Journalほど素晴らしいものはないですね。小さなチームではありますが、クリエイティブで情熱を持った人たちが集まっています。
作品が掲載される場所によって、撮影時のアプローチが変わることはありますか?
いいえ。そのようなことは考えないですね。どんな媒体にもあうような、より良い写真を撮ることのほうが大切です。もちろんリクエストがあればそれに従いますが。ただ、写真を依頼する際に特定のフォーマットやプラットフォームだけに集中することは苦手なんです。世界はInstagramや特定のフォーマットのみで成り立っているわけではないですからね。
最後に、ゴルフ写真家を志す人へのアドバイスはありますか?
この質問をよく受けるんです。私の場合、写真家として仕事になるまで約30年かかりました。IKEAの棚から写真集、美術書、雑誌をかき集めて、アシスタントとして10年以上働いて。世界中の博物館や展示会を訪れて、機会があればどこへでも行きました。写真は人生そのものです。私はいろんなことをちょっとずつやるタイプではないんです。究極のアドバイスになりますが、大事なのは外の世界に出て、やっていることを楽しむこと。私はいつも楽しんでいます。自分の撮った写真が気に入ったのなら、それで十分です。“F**k the rest.”。
Kinno氏の作品群は、7月12日(金)より『Hypegolf』代官山旗艦店の店舗限定で販売開始。販売情報等のアップデートは『Hypegolf Japan』の『Instagram(インスタグラム)』にて配信するため、そちらもお見逃しなく。
Hypegolf
住所:東京都渋谷区猿楽町27-3
Tel:03-6416-1618
営業時間:11:00–20:00